日々の忙しさから解放され、リラックスしたいとき、多くの人が外出して娯楽を求めます。しかし、コストパフォーマンスを考えると、自宅でのんびりとお風呂に浸かることが、最も効果的なリラクゼーション方法の一つであることがわかります。この記事では、入浴がもたらす幸せホルモンの分泌と健康への多大な効果について、科学的根拠を交えて解説します。また、快適な入浴方法についても紹介していますので、参考にしてください。
お風呂に入るだけで幸せになれる
入浴は単なる身体を清潔にする行為以上のものです。温かいお湯に身を委ねることで、心身の緊張がほぐれ、ストレスが軽減されます。特に、温浴によって体温が上昇すると、幸せホルモンとも呼ばれる「セロトニン」や「オキシトシン」の分泌が促進されることが研究で示されています。
セロトニンの分泌
セロトニンは、脳内の神経伝達物質であり、「喜びや快楽」、「恐怖や驚き」などの感情を制御することで、気分を安定させて、「幸福感」を高める効果があります。温かいお風呂に浸かることで、このセロトニンの分泌が活発になり、リラックス効果が得られるのです。また、不安や鬱(うつ)などの精神的な症状は、セロトニンの分泌が低下することで現れやすくなります。つまり、毎日入浴するだけで、日々の心配事や仕事の不安などを和らげることができます。
人生の幸福は「腸活」で決まる!?
通常、お腹が冷えると体調が悪くなりますよね。反対に、お腹を温めると体調が良くなります。温かいお湯に浸かると、お腹が温められて「腸の働き」が活性化します。腸の働きが活性化すると、栄養の消化吸収の効率が上がります。そして、このことがセロトニンの分泌を飛躍的に高めるのです。というのも、セロトニンの9割が腸の活動によって産み出されているからです。この一文だけでも、いかに「腸活」が重要なのかがわかりますよね。幸福感をもたらすセロトニンの9割を「腸」が産み出している以上、人生の幸福には「腸の健康」が必要不可欠です。だから、昨今の腸活ブームは、一時のブームで終わらせてはいけないものだと考えています。
セロトニン | e-ヘルスネット(厚生労働省) (mhlw.go.jp)
オキシトシンの分泌
オキシトシンは、愛情ホルモンとも呼ばれ、人との絆を深める作用があります。前述したセロトニンの増加を促進することで、リラックスした幸福感を得ることができます。入浴中にこのホルモンが分泌されると、心が穏やかになり、人間関係が改善される可能性もあります。
また、ストレスや不安が軽減され、記憶力の向上にも寄与することから、学習意欲を高める効果も期待できます。
さらに、このオキシトシンは、動物と見つめ合うことでも分泌されます。もしネコを飼っているなら、ネコと一緒に入浴時間を過ごすことで、相乗効果が期待できるでしょう。暖かくなったお風呂のフタの上、ここが好きなネコはいますからね。ネコがいないなら、スマホでネコの動画を見ましょう。実はこれでもオキシトシンは分泌されるようです。(別にイヌでも構いません)
入浴のいろいろな健康効果
入浴は血行を良くし、筋肉の疲労回復を助けるなど、健康に対しても多くの利点があります。入浴は、リラックスするだけでなく、健康維持にも役立つ、手軽で効果的な方法です。以下に、入浴による主な健康効果をご紹介します。
温熱作用
お風呂に入ると体が温まり、血管が拡がって「血液の循環」が良くなります。これにより、全身に酸素や栄養が行き渡り、老廃物が排出されやすくなります。これは疲労回復にもつながり、筋肉や関節の痛みの緩和、精神的なリラックス効果にも寄与します。
細胞修復作用
身体への温かいお湯の刺激によって、体内に「ヒートショックプロテイン」というタンパク質が産み出されます。ヒートショックプロテインは、傷ついた細胞を修復する作用があり、まさに「湯治」のような効果が期待できます。湯治とは、入浴によりケガや病気を治したり、体調を整えたりすることです。
また、ヒートショックプロテインが最も増加する条件として、「体温+2度の湯船に、長く浸かる」ことが勧められています。具体的には、38度くらいのお風呂に20分くらい浸かると効果が高まるようです。軽くケガをした時には、温度38度で20分の入浴を意識してみてください。
静水圧作用
水圧によって体が締め付けられることで、血液が心臓に押し戻され、血液の循環が促進されます。特に立ち仕事などで「足のむくみ」が気になる場合に効果的です。
浮力作用
水に浸かると体に浮力が働き、体重が軽くなります。これにより、筋肉や関節への負担が減少し、リラックス効果や、疲労回復効果が得られます。特に、普段全身の体重を支えている下半身への効果が期待できるでしょう。
清浄作用
お湯に浸かることで毛穴が開き、皮膚表面の汚れが落ちやすくなります。これは肌の健康を保つ上で重要な作用です。そのため、先にある程度お湯につかった後に、頭や体を洗った方が合理的といえるでしょう。ただし、いきなり熱い湯船に入ると、急激な血圧の上昇を招く危険があります。そのため、温泉や銭湯に入るときのように、十分な「かけ湯」や、「シャワー」で体を徐々に温めてから湯船に入りましょう。
蒸気・香り作用
湯船から立ち上る蒸気は、鼻やのどの粘膜に潤いを与え、乾燥を予防します。また、入浴剤やアロマオイルなどを使用することで、リラックス効果を高めることができます。
なお、アロマオイルには、オキシトシンの分泌を促す効果があります。ひとつ注意点として、アロマオイルは基本的に、直接お湯には入れないようにしましょう。油は水に溶けずに水面に浮いてしまうため、オイルが直接肌につくことで、敏感肌の方は炎症を起こしてしまう可能性があります。また、目に入ってしまう危険もありますので、アロマオイルは用法用量を守って正しく使いましょう。
心臓病の予防
定期的な入浴は、心臓病のリスクを低減することが研究で明らかにされています。温浴による血圧の低下は、心臓にかかる負担を軽減し、心臓病の予防につながります。
ただし、これも入り方には気を付けましょう。特に、寒い冬に風呂場に入ると、体温を保つために血圧を急激に上げようと血管が収縮します。これは「ヒートショック」と呼ばれ、生活習慣病や血管の疾患などがある方には、非常に危険なものです。既にそういった症状のある方や、高齢の方などは、十分に気をつけてください。
最近では浴室暖房という文明の利器もあるので、老若男女問わず活用していければ、より安全な入浴ライフを楽しめるでしょう。
睡眠の質の向上
夜の入浴は体温の自然な下降を促し、睡眠の質を向上させる効果があります。良い睡眠は、翌日のパフォーマンス向上に不可欠です。
大事なのは「入浴のタイミング」ですが、どのような睡眠を取りたいかによって変わってきます。深い睡眠をとりたいなら、寝る直前に入浴することが推奨されています。しかし、寝つきの良さを優先させる場合には、就寝の2~3時間前が良いとされています。
自宅での入浴はコスパのいい趣味
入浴は、幸せになれるだけでなく、健康にもなれるという、まさに一石二鳥の習慣です。しかし、入浴中に何もしないのも退屈ですよね(それはそれで良いのですが)。
例えば、読書や動画視聴、音楽鑑賞など、入浴中に自分の好きなことを楽しむことができれば、入浴時間は一石三鳥の娯楽になります。今はスマホだけでも色々楽しむことができますよね。
休日に何をするか迷ったときに、外出して無駄遣いをするくらいなら、たまには自宅でゆっくり風呂に浸かって、趣味の時間を楽しみましょう。入浴に大したお金はかかりません。散財を予防するというメリットを加えれば、自宅での入浴は「一石四鳥」となる最高の趣味にグレードアップします。
入浴時間を楽しむための注意点
入浴時間を趣味の時間にしてしまうと、つい長風呂になってしまいそうですよね。そのため、快適かつ安全に入浴時間を楽しむためのポイントを4つあげておきます。
- 水分補給
- 入浴温度
- 入浴時間
- 入浴方法
それでは、順番に見ていきましょう。
1,水分補給
人間は生きているだけで、徐々に水分が失われていきます。寝起きに汗をかいていなくても、睡眠中の呼吸や細かい汗により、500ml~1,000mlの脱水が起きているといわれています。睡眠時間と比べると時間は短いですが、温かい湯船に使っていれば当然いつも以上に脱水は起こります。そこで、入浴中の脱水症状を避けるため、ペットボトルに入れた水などで、こまめに水分補給できるようにしておきましょう。
2,入浴温度
長めの入浴であれば、お湯の温度は低めにしましょう。個人差はありますが、温度が41度であれば、20分も浸かればのぼせてしまします。温度が42度なら、10分も浸かっているのは難しいでしょう。これではリラックスどころか、体に負担がかかり、逆に疲れてしまいます。長めに入る適温としては、38度~40度くらいの、ぬるめの温度で入浴を楽しみましょう。
3,入浴時間
入浴時間は、温度や入浴方法にもよりますが、だいたい20~30分を目安にしてください。目安時間のタイミングで、いったん湯船から出たり、水分補給したりと、意識的に「休憩時間」をとりましょう。季節や風呂場の構造にもよりますが、休憩時間には窓を少し開けて外気を取り込み、いわゆる外気浴に近いことをすることで、再入浴も快適にできるでしょう。これは、スーパー銭湯や温泉での考え方と同じですが、自宅ではなかなか意識しませんよね。まずは安全第一に、自分の体調に合わせて休憩時間をとりつつ入浴を楽しみましょう。
4,入浴方法
主な入浴方法には、「半身浴」と「全身浴」があります。全身浴は、文字通り全身が湯船に浸かっているため、入浴の健康効果を全身に受けられます。しかし、そもそも入浴自体が身体にとっては負担となる側面があります。全身浴では、健康効果と同じく、身体への負担も全身に受けてしまいます。
一方、半身浴は、身体の半分だけが湯船に浸かっているため、入浴の「健康効果」と「身体への負担」は、それぞれ全身浴と比べて半分になります。つまり、「全身浴の10分間」と「半身浴の20分間」では、健康効果と身体への負担が同じになるということです。本記事の入浴を楽しむという目的では、より長く入浴を楽しめる「半身浴」がオススメとなります。
半身浴と全身浴のメリット・デメリット [疲労回復法] All About
結局、どうやって入浴すればいいの?
上記の注意点を踏まえると、楽しんで入浴するための最適な方法は、次の通りです。
- こまめに水分補給をする
- 入浴温度は38度が理想
- 入浴時間は20~30分で休憩時間をとる
- 主に半身浴で浸かる
- 疲れを感じたり、心地良くなくなったら入浴を中止する
以上のことを参考に、その時の気候や自分の体質に合わせて、快適な入浴となるよう調整していきましょう。
まとめ
この記事では、入浴がもたらす「幸せホルモンの分泌」と「健康への効果」、さらに「楽しい入浴のための注意点」について、科学的根拠を交えて解説しました。入浴を日常生活に取り入れることは、心身の健康を支える重要な要素となる上、とてもコスパの良い趣味にもなります。以下に、今回の記事のポイントをまとめておきます。
- 自宅での入浴は、外出して娯楽を楽しむよりも、コストパフォーマンスに優れたリラクゼーション方法です。
- 温浴は幸せホルモンの分泌を促進し、幸福感やリラックス効果などから精神の安定をもたらします。
- 定期的な入浴は、筋肉の疲労回復、傷ついた細胞の修復、心臓病のリスクを低減、睡眠の質を向上させるなど、健康に多くの利点があります。
- 自宅での入浴は、一石四鳥の最高の趣味となります。
日々の生活に快適な入浴時間を取り入れることで、心身の健康を保ちながら、経済的にも効率的なリラックスタイムを実現することができます。入浴を単なる作業扱いせず、あえて娯楽や趣味と捉えることにより、日常生活の満足度をワンランクアップさせることができるでしょう。