塩は私たちの食生活に欠かせない調味料ですが、あなたが使っているのは「体に良い栄養豊富な塩」ですか?それとも「塩のような味がする薬品」ですか?実は、塩には「天然塩」と「精製塩」の二種類があり、その違いは健康に大きな影響を与えます。この記事では、塩の種類とその特徴、塩分の摂取量と健康との関係について、最新の研究やデータをもとに解説します。
「天然塩」と「精製塩」の違い
塩は海水や湖水などの水分を蒸発させて得られる結晶ですが、そのままでは不純物や雑菌が含まれています。そのため、塩を食用にするには、精製する必要があります。精製とは、塩に含まれる不純物や雑菌を取り除くことですが、その方法によって塩の種類が分かれます。
天然塩とは
天然塩とは、水分を蒸発させて得られた塩に、自然のままのミネラルや微量元素を残したまま、粗く砕いたものです。天然塩には、「海塩」「岩塩」「湖塩」などがあります。天然塩は、塩の風味や色、粒の大きさなどが異なりますが、共通しているのは、塩に含まれるミネラルや微量元素が多いということです。天然塩には、ナトリウムや塩素のほかに、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、亜鉛、セレンなど、60種類以上のミネラルや微量元素が含まれています。これらのミネラルや微量元素は、体の水分や電解質のバランスを整えたり、酵素の働きを助けたり、免疫力を高めたりするなど、様々な生理機能に関与しています。
精製塩とは
精製塩とは、水分を蒸発させて得られた塩に、不純物や雑菌を取り除くだけでなく、ミネラルや微量元素もほとんど除去したものです。精製塩には、「食塩」「精製海塩」「ミネラル塩」などがあります。精製塩は、塩の風味や色、粒の大きさなどがほぼ同じで、白く細かい粉状になっています。精製塩は、塩に含まれるミネラルや微量元素がほとんどなく、塩化ナトリウムが主成分となっています。精製塩は、天然塩に比べて安価で、保存性や安定性が高いという利点がありますが、ミネラルや微量元素の欠乏によって、体に悪影響を及ぼす可能性があります。
塩を変えるだけで体が整う!?天然塩のメリット
天然塩には、ミネラルや微量元素が豊富に含まれているという特徴がありますが、これらの成分は、私たちの体にとってどのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは、天然塩のメリットについて、いくつかの例を挙げてみます。
血圧を下げる
塩分の摂り過ぎは、血圧を上げるというのはよく知られていますが、実は、塩分の種類によってもその影響は異なります。塩分の主成分であるナトリウムは、体内の水分量を調節するために必要なミネラルですが、摂り過ぎると、血液の量が増えて血圧が上ります。しかし、天然塩に含まれるカリウムやマグネシウムなどのミネラルは、ナトリウムの排出を促したり、血管の弾力を保ったりすることで、血圧を下げる効果があります。実際、天然塩を摂取した人と精製塩を摂取した人を比較した研究では、天然塩を摂取した人の方が、血圧が低く、心血管疾患のリスクが低いことが示されています 。
消化を促進する
塩分は、胃酸の生成に必要な成分ですが、「胃酸の量や質」にも塩分の種類が影響します。天然塩に含まれるミネラルや微量元素は、胃酸のpHを適切に保ち、消化酵素の働きを助けることで、消化を促進します。また、天然塩に含まれる塩化物は、胃の粘膜を保護し、胃炎や胃潰瘍の予防にも役立ちます。一方、精製塩に含まれるナトリウムは、胃酸のpHを下げすぎて、胃の粘膜を傷つけたり、胃酸過多や逆流性食道炎を引き起こしたりする可能性があります 。
免疫力を高める
塩分は、体の水分や電解質のバランスを整えるだけでなく、「免疫系の機能」にも重要な役割を果たします。天然塩に含まれるミネラルや微量元素は、白血球の活性化や抗体の生成を促したり、細菌やウイルスの侵入を防いだりすることで、免疫力を高めます。特に、天然塩に含まれる「亜鉛」は、免疫系の調節や炎症の抑制に欠かせないミネラルです。亜鉛の不足は、感染症やアレルギーなどの免疫系の異常を引き起こす可能性があります 。
徐々に体を蝕む工業薬品!?精製塩のデメリット
精製塩には、ミネラルや微量元素がほとんど含まれていないという特徴がありますが、これはどのようなデメリットをもたらすのでしょうか?ここでは、精製塩のデメリットについて、いくつかの例を挙げてみます。
ミネラルや微量元素の不足
精製塩は、ほぼ塩化ナトリウムが主成分となっており、ミネラルや微量元素はほとんど含まれていません。しかし、ミネラルや微量元素は、体の水分や電解質のバランスを整えたり、酵素の働きを助けたり、免疫力を高めたりするなど、様々な生理機能に関与しています。そのため、精製塩を摂取すると、ミネラルや微量元素の不足が起こりやすくなります。ミネラルや微量元素の不足は、疲労や倦怠感、頭痛やめまい、筋肉痛やけいれん、貧血や免疫低下など、様々な症状や疾患を引き起こす可能性があります 。
添加物の危険性
精製塩は、不純物や雑菌を取り除くために、高温や化学処理を施されています。その過程で、塩には添加物が混入されることがあります。添加物には、漂白剤や防腐剤、抗凝固剤や着色剤などがあります。これらの添加物は、塩の色や形、質感や保存性を改善するために使用されますが、体にとっては有害な物質です。添加物は、アレルギーや発がん性、内分泌系の乱れや神経系の障害など、様々な健康被害を引き起こす可能性があります 。
塩分は体に悪いというのは嘘!?
塩分の摂り過ぎは、血圧を上げたり、腎臓や心臓に負担をかけたりするというのは、一般的に言われていることですが、本当にそうなのでしょうか?実は、塩分の摂取量と健康との関係については、様々な研究や見解があり、一様には言えないのが現状です。ここでは、塩分の摂取量と健康との関係について、最新の研究やデータをもとに考察してみます。
塩分の摂取量と血圧との関係
塩分の摂り過ぎは、血圧を上げるというのは、医学的にも根拠のあることですが、実は、塩分の摂取量と血圧との関係は、個人差が大きいことがわかっています。塩分の摂取量によって血圧が上がりやすい人を「塩感受性高血圧」と呼びますが、この人は、全体の約20%に過ぎません。残りの80%の人は、塩分の摂取量によって血圧が上がらないか、むしろ下がることもあるということです。つまり、塩分の摂取量が血圧に与える影響は、個人の体質や遺伝的な要因によって異なるということです。
塩分の摂取量と死亡率との関係
塩分の摂り過ぎは、高血圧や心血管疾患のリスクを高めるというのは、一見、納得できることですが、実は、塩分の摂取量と死亡率との関係については、科学的な根拠が不十分であるということがわかってきました。世界中の様々な国や地域で行われた疫学調査や臨床試験では、塩分の摂取量と死亡率との間には、一貫した相関関係が見られないか、むしろ逆の傾向が見られることが多いのです。逆に、塩分の摂り不足は、低血圧や心不全のリスクを高めるという研究結果もあります。
世界保健機関(WHO)は、塩分の摂取量を1日あたり5グラム以下にすることを推奨していますが、この基準は、科学的な根拠に基づいているとは言い難いという指摘もあります。実際、塩分の摂取量と死亡率との関係を調べた大規模な疫学調査では、塩分の摂取量が1日あたり5グラム以下の人よりも、塩分の摂取量が1日あたり10グラムから15グラムの人の方が、死亡率が低いことが示されています 。つまり、塩分の摂取が少ない人よりも、塩分の摂取が多い人の方が、死亡率が低いこともあるようです。
まとめ
この記事では、塩の種類と健康への影響について、最新の研究やデータをもとに解説しました。塩には天然塩と精製塩の二種類があり、その違いは健康に大きな影響を与えます。天然塩には、ミネラルや微量元素が豊富に含まれており、血圧を下げたり、消化を促進したり、免疫力を高めたりするメリットがあります。精製塩には、ミネラルや微量元素がほとんど含まれておらず、添加物が混入されていることもあり、ミネラルや微量元素の不足や添加物の危険性があります。塩分の摂取量と健康との関係については、個人差が大きく、一様には言えないことがわかりました。塩分の摂取量は、自分の体質や状態に合わせて調整することが大切です。
記事の内容のポイントを箇条書きでまとめると、以下のようになります。
- 塩には「天然塩」と「精製塩」の二種類がある
- 天然塩には、ミネラルや微量元素が豊富に含まれており、健康に良い影響を与える
- 精製塩には、ミネラルや微量元素がほとんど含まれておらず、添加物が混入されていることもあり、健康に悪影響を与える
- 塩分の摂取量と健康との関係は、個人差が大きく、一様には言えない
以上が、塩の種類と健康への影響について知っておきたいことでした。塩は私たちの食生活に欠かせない調味料ですが、その種類や量によって、体に与える影響は大きく変わります。自分の体に合った塩を選んで、健康的な食生活を送りましょう。