毎日忙しい現代社会で、食事を早飲みすることが増えています。しかし、食事をしっかりと噛まずに飲み込むことは、健康リスクを高める可能性があります。実は、「よく噛む」というシンプルな習慣が、私たちの健康に劇的な変化をもたらすことが近年明らかになっています。
今回は、咀嚼運動がもたらす健康効果ついて、研究結果を交えながら解説していきます。また、咀嚼運動を効果的に行う方法についてもご紹介します。
咀嚼運動とは?
咀嚼運動とは、食べ物を噛むことで口腔内の筋肉を動かす運動のことです。咀嚼運動は、食べ物を細かくすることで消化を助けるという基本的な役割のほかに、以下のような「4つの効果」があります。
1,脳への効果
咀嚼運動は、脳への血流を促進し、記憶力や集中力を高める効果があります。また、脳の血流が増えることや、脳への刺激により、認知症の予防にもなるともいわれています。なお、根本的なメカニズムは明らかではないものの、咀嚼と認知症の関連性について、現時点では支持する意見が多いようです。
咀嚼と認知症に関する研究レビューと今後の研究展開https://www.jstage.jst.go.jp/article/ajps/12/2/12_135/_pdf
咀嚼が一般高齢者の短期記憶に長期的に与える影響
https://www.jshss.org/wp-content/uploads/2017/03/2016-2.pdf
2,歯や口腔内への効果
咀嚼運動は、唾液分泌を促進し、虫歯や歯周病のリスクを軽減します。唾液には、口腔内の汚れを洗い流したり、抗菌作用を持つ効果があります。唾液は虫歯や歯周病の予防にも重要な役割を果たしています。唾液にはリゾチームやペルオキシターゼといった物質が含まれ、これらは虫歯菌に対して抗菌作用を発揮します。
「噛むこと」が口腔ケアにつながる? – 噛むこと研究室. https://www.lotte.co.jp/kamukoto/mouth/922.
3,顔や首への効果
咀嚼には、顔や首の筋肉を多く使うため、顔のたるみや二重顎の予防・改善効果があります。また、「舌のトレーニング」が顔のたるみや噛み合わせの改善に有効という報告もあり、舌の筋肉を鍛える「ベロ回し体操」というものが面白かったので、やり方を紹介しておきます。
顔のたるみも噛み合わせも改善!? 舌を鍛える!「ベロ回し体操 …. https://www.lotte.co.jp/kamukoto/beauty/1109.
4,食べ過ぎ予防の効果
よく噛むことで、満腹中枢が刺激され、食欲を抑制する効果があります。九州大学病院の研究によると、ゆっくりと噛んで食事をした被験者の方が、早く噛んで食事をした被験者よりも、満腹感を感じやすかったことが報告されています。
参照:糖尿病の人は「ゆっくり食べる」と肥満リスクが低下 肥満に …
https://dm-net.co.jp/calendar/2020/030686.php?ssp=1&setlang=ja&cc=JP&safesearch=moderate
満腹感を得るには食事の量よりも「噛む回数」
よく噛むことは、食事量を減らしながら満腹感を高める効果があります。これは、主に3つの生理的なメカニズムによるものとされています。
1,消化酵素の影響
まず、よく噛むことで唾液の分泌が増えます。唾液には、食べ物の消化を助ける「消化酵素」が含まれていて、この消化酵素が食べ物の「栄養の吸収」を促進します。これにより、食事の量が少なくても満腹感が得やすくなります。
2,ホルモンの影響
咀嚼運動は脳の満腹中枢を刺激します。満腹中枢が刺激されると、満腹感を引き起こすホルモンが分泌されます。これが咀嚼回数とともに増えていくことで、満腹感がだんだんと増していきます。これにより、食欲が抑制されると考えられています。
3,食事時間の長さの影響
咀嚼回数を増やすことで、食事時間が長くなります。食事時間が長くなると、脳が満腹のサインを受け取る時間も長くなります。そのため、食事時間が短いよりも、食事時間を長めに取った方が、より満腹感を得やすく、食べ過ぎの予防にもつながります。
噛むこととメタボの意外な関係 – 噛むこと研究室 – お口の恋人 …. https://www.lotte.co.jp/kamukoto/beauty/644.
咀嚼運動のコツ
咀嚼運動を効果的に行うためには、以下のようなポイントに注意すると良いでしょう。
- 食事の時間を十分にとること。早食いは咀嚼運動の妨げになります。一食に20分以上かけるように心がけましょう。
- 噛み応えのある食べ物を選ぶこと。柔らかい食べ物や液状の食べ物は、咀嚼運動になりにくいです。野菜や果物、ナッツやチーズなど、歯ごたえのある食べ物を積極的に摂るようにしましょう。
- 左右均等に噛むこと。咀嚼運動は、左右の顎の筋肉をバランスよく鍛えることが大切です。左右どちらかに偏らないように、意識的に噛み分けましょう。
- 食事以外の時間にも咀嚼運動をすること。食事だけでは咀嚼運動が足りない場合は、ガムやキャンディなどを噛むことで、咀嚼運動を補うことができます。ただし、糖分の摂り過ぎには注意しましょう。
まとめ
咀嚼運動は、食べ物をよく噛むことで、さまざまな健康効果を得ることができる運動です。咀嚼運動のメリットは以下の通りです。
- 消化器の働きを良くする
- 脳の機能を高める
- 歯や歯茎の健康を保つ
- 顎や頬の筋肉を鍛える
- 食欲をコントロールする
咀嚼運動を効果的に行うためには、食事の時間を十分にとり、噛み応えのある食べ物を選び、左右均等に噛み、食事以外の時間にも咀嚼運動をすることがポイントです。
咀嚼運動は、特別な道具や場所を必要とせず、誰でも簡単にできる運動です。毎日の食事を、咀嚼運動のチャンスと捉えてみましょう!