家を買うか、借り続けるか。
この話題は、いつも数字の議論になりがちです。
でも実際に経験してみて感じたのは、数字だけでは決まらないということでした。
今回は、当時の私が何を見ていたのか、そして今どう考えているのかを書いてみます。
私が見ていたのは、購入価格ではなかった
正直に言うと、当時の私にマネーリテラシーはほとんどありませんでした。
それでも一つだけ、明確な基準を持っていました。
毎月の住宅コストが、今より上がらないこと。
購入価格そのものではなく、ローン返済額や管理費などを合わせた月々のランニングコストで比較していたのです。
賃貸でも持ち家でも、毎月出ていく金額が同じなら、そこは大きな違いにはならない。
そう考えていました。
一生住むとは限らないから、出口も考えた
もう一つ意識していたのが、出口です。
一生ここに住み続けるとは限りません。子どもの進学のタイミングや、独り立ちした後のことを考えれば、いずれ引っ越す可能性は十分にあります。
だから、十数年後に売却する可能性も、漠然とではありますが視野に入れていました。
そうなると、重視すべき条件は自然と絞られてきます。
駅から近いこと。日常の買い物や子育ての環境が整っていること。
自分が住みやすいと感じる条件は、次に住む人にとっても住みやすい条件になるはずだからです。
でも、最大の決め手は運だった
ここまで書くと、条件を整理して理詰めで選んだように聞こえるかもしれません。
でも、実際に一番大きかったのは運でした。
いくら理想の条件を決めていても、探しているそのタイミングで、条件に合う物件が売りに出ているかどうかは、自分では選べません。
不動産には、似た物件はあっても、まったく同じ物件は存在しないという特徴があります。
地域とタイミングによっては、納得できる物件が何年も出てこないこともあり得ます。
つまり、住宅探しは選択肢が驚くほど少ない買い物なのです。
「もっと良いものがあるはずだから、これはやめておこう」
そう判断しにくい構造になっています。
運は選べないが、出会う回数は増やせる
では、運任せにするしかないのでしょうか。
そうは思いません。
運そのものは操作できませんが、運に出会う機会の数は増やせます。
そのための方法が、探す期間を長く取ることです。
短期間で決めようとすれば、そのとき出ている物件の中から選ぶしかありません。期間を長く取れば、それだけ選択肢が入れ替わり、良い巡り合わせに当たる可能性が上がります。
急いで決めない。これが、運という要素に対してできる、数少ない備えだと思っています。
住宅ローンという借金について
さて、避けて通れないのが住宅ローンの話です。
当時の私は、借金は良くないものだけれど、家を買うなら住宅ローンは普通のこと、という程度の認識でした。
ただ、一つはっきり感じていたことがあります。
借金をしなければ、住宅コストを維持したまま、より良い住環境に移ることはできなかった、ということです。
賃貸で同じ住環境を手に入れようとすれば、月々の負担は確実に上がります。それでは生活が苦しくなってしまう。
つまりこのケースでは、借金をすることで、明らかに良い環境で暮らせるようになったのです。
今の私はもう少し踏み込んで考えています。
住宅ローンは、金利が低く、控除もある借金です。だとすれば、使わない方がむしろ効率が悪い。
だから私は繰上げ返済をせず、その資金をすべて投資に回しました。
今は一括返済することもできますが、あえてしていません。
ただし、それ以外の借金は別物です
誤解のないように書いておくと、私は借金全般を肯定しているわけではありません。
住宅ローン以外の借金は、基本的に良くないものだと考えています。
理由はシンプルです。
住宅ほど生活に必要で、かつ一般的な会社員が借金なしには買えないほど高額なものは、他にほとんどないからです。
だとすれば、住宅以外で借金しなければ買えないものは、多くの場合、娯楽の類ということになります。
そういうものは、計画的に貯めて、一括で買えばいい。
同じ「借金」という言葉でも、中身はまったくの別物だと思っています。
数字で選んだ答えが、家族の納得とは限らない
ここからが、実は一番書きたかったことです。
私が選んだのは、都心のおしゃれな街からは離れた場所でした。
同じ価格帯の中では間取りが無難で、生活に必要な施設が近くにそろっていて、通勤のアクセスも良く、駅から近い。
条件だけを並べれば、納得のいく選択だったと思います。
ただ、最寄り駅は特に栄えているわけでもない、聞いたこともないような駅でした。
妻からは、もう少し栄えた場所がいい、という空気のようなものを感じました。はっきり反対されたわけではありませんが、その微妙な温度差は伝わってきました。
数字と条件で導いた答えが、そのまま家族にとっての正解になるとは限らない。
それを実感した瞬間でした。
結果的には、住環境が良かったこともあり、住めば都となりました。
自分ひとりで決められる立場だったなら、迷わず同じ選択をしていたと思います。実際、条件面での判断は変えていません。
でも、もし妻の意見が絶対的に優先されるような夫婦関係だったとしたら、また違う結論になっていたはずです。
家族がいるということは、そういうことなのだと思います。
一週間の生活を、具体的に想像してみる
こうした経験から、住まいを比較するときのコツのようなものが見えてきました。
それは、その家に住んだときの一週間の動きを、具体的に想像してみることです。
朝どうやって出かけるのか。買い物はどこでするのか。子どもはどこで過ごすのか。休日は何をするのか。
条件を箇条書きで比べるのではなく、生活そのものを頭の中で動かしてみる。
そうすると、スペック上は良く見えていた物件の使いにくさや、地味に見えていた物件の暮らしやすさが浮かび上がってきます。
最後に効いてくるのは、治安だった
そして、住み始めてから年々重みを増しているのが、治安の良さです。
これは、住む前には正直そこまで意識していませんでした。
でも、子どもが大きくなるにつれて、その重要性を強く感じるようになりました。
治安が良いかどうかは、子どもが自由に遊びに行けるかどうかに直結します。
そしてそれは、子どものメンタルだけでなく、それを心配する親のメンタルにも、じわじわと効いてきます。
安心して送り出せるかどうかで、日々のストレスはまったく違うのです。
規模の違いはあれど、世界でも、国でも、街でも、最も重要なのは平和であり、安全です。
その前提があって初めて、安心した子育てや快適な生活が成り立つのだと感じています。
まとめ
家を買うとき、私が見ていたのは購入価格ではなく、月々の住宅コストでした。
一生住むとは限らないので、出口のことも考えていました。
ただ、一番大きかったのは運です。探しているタイミングで良い物件に出会えるかどうかは、自分では選べません。だからこそ、探す期間は長めに取った方がいいと思います。
住宅ローンは、金利と控除を考えれば、積極的に使ってよい借金だと考えています。ただし、それ以外の借金は話が別です。
数字で導いた正解が、家族にとっての正解になるとは限りません。
条件を並べて比べる前に、その家で送る一週間の生活を想像してみる。
そして、暮らしの土台になるのは、結局のところ安心して過ごせる環境だということ。
家選びで本当に効いてくるのは、そういう部分なのだと思っています。
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